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2025年12月02日 19:45


1.事例

被相続人Xが甲土地をAに相続させる遺言(特定財産承継遺言)を作成していました。
遺言書にはBを遺言執行者とする旨の記載があります。
この度、Bが遺言執行者として相続登記を申請した場合、A名義の登記識別情報は通知されますか?(権利証が発行されますか?)


2.前提知識

(1)遺言執行者からの相続登記の申請

平成30年民法改正以前は、特定の相続人に不動産を相続させる旨の遺言がされた場合については、不動産登記法上、権利を承継した相続人が単独で登記申請をすることができるとされていることから、当該不動産が被相続人名義である限りは、遺言執行者の職務は顕在化せず、遺言執行者は登記手続をすべき権利も義務も有しないとされていました(最高裁平成11年12月16日判決民集第53巻9号1989頁)。

当時は、判例上、相続させる旨の遺言によって承継された権利については、登記なくして第三者に対抗することができるとされていましたので、このように解しても特に問題が生じることはなかったものと考えられます。

ただ、平成30年民法改正後は、相続させる旨の遺言(特定財産承継遺言)がされた場合についても、取引の安全等を図る観点から、遺贈や遺産分割と同様に対抗要件主義が導入され、法定相続分を超える権利の承継については、対抗要件お具備なくして第三者の権利の取得を対抗することができないこととされました(堂薗幹一郎『一問一答 新しい相続法』116頁)。

そういった経緯もあり、民法1014条第2項では、相続させる旨の遺言(特定財産承継遺言)がされた場合について、遺言執行者はその遺言によって財産を承継する受益相続人のために対抗要件を具備する権限を有することが明確化されています。

では、実際の条文をみてみましょう。

民法1004条(特定財産に関する遺言の執行)
1 (略)
2 遺産の分割の方法の指定として遺産に属する特定の財産を共同相続人の一人又は数人に承継させる旨の遺言(以下「特定財産承継遺言」という。)があったときは、遺言執行者は、当該共同相続人が第八百九十九条の二第一項に規定する対抗要件を備えるために必要な行為をすることができる
3 (以下略)

この条文が創設されたことにより、遺言執行者は単独で、相続による権利の移転の登記を申請することができるようになりました。

なお、受益相続人が対抗要件を備えることは、民法第1013条第1項の「その他遺言の執行を妨げるべき行為」に該当しないことから、平成30年民法改正後(現行法)も、受益相続人が単独で相続による権利の移転の登記を申請することができることには変わりありません(堂薗幹一郎『一問一答 新しい相続法』117頁)。


(2)登記識別情報が通知される場合

不動産登記法第21条(登記識別情報の通知)
登記官は、その登記をすることによって申請人自らが登記名義人となる場合において、当該登記を完了したときは、法務省令で定めるところにより、速やかに、当該申請人に対し、当該登記に係る登記識別情報を通知しなければならない。ただし、当該申請人があらかじめ登記識別情報の通知を希望しない旨の申出をした場合その他の法務省令で定める場合は、この限りでない。

不動産登記法第21条は、登記識別情報を通知する場合(いわゆる権利証が発行される場合)として、その登記をすることによって、申請人自らが登記名義人となる場合」に限定しています。

例えば、相続人1人(A)から法定相続人3名(A、B、C)の共有名義とする法定相続分による相続登記を申請した場合は、申請したAには登記識別情報が通知される(権利証が発行される)ものの、B、Cは、自ら登記申請をしていないため、登記識別情報は通知されないということになります。

この事例を踏まえると、遺言執行者が登記を申請した場合、受益相続人は登記名義人を得てはいるものの、申請を自らしていないので、登記識別情報が通知されない(権利証が発行されない)のではないかという疑問が生じてしまいます。

仮にそうであるとすれば、今後の売却等に不都合が生じるので、遺言執行者からの相続登記を申請することは避けるべきとの考えに至ることになりますが、実際の取り扱いはどのようになるのでしょうか?


3.検討

不動産登記規則第62条(登記識別情報の通知の相手方)
1 次の各号に掲げる場合における登記識別情報の通知は、当該各号に定める者に対してするものとする。
  一 法定代理人(支配人その他の法令の規定により当該通知を受けるべき者を代理することができる者を含む。)によって申請している場合 当該法定代理人
  二 申請人が法人である場合(前号に規定する場合を除く。) 当該法人の代表者
2 登記識別情報の通知を受けるための特別の委任を受けた代理人がある場合には、登記識別情報の通知は、当該代理人に対してするものとする。



不動産登記規則第62条には、登記識別情報の通知の相手方に関する規定がございます。

法定代理人が登記を申請した場合は、当該法定代理人に対して登記識別情報が通知される(不動産登記規則第62条第1項第1号)ことになります。

この点、「遺言執行者は、一般に、法定代理人であると解されて」(令和元年6月27日付法務省民二第68号通達)いますので、法定代理人である遺言執行者に対して、登記識別情報が通知されることになります。



4.結論

今回の事例では、A名義の登記識別情報が遺言執行者であるBに対して、通知されることになります。

もちろん、遺言執行者Bが司法書士に登記申請を依頼した場合、「登記識別情報の通知を受けるための特別の委任」(条文では「特別の委任」となっていますが、通常は、委任状に盛り込んで記載されています)をしていれば、司法書士に対してB名義の登記識別情報が通知されることになります(不動産登記規則第62条第2項)。

よって、遺言執行者が特定財産承継遺言に基づいて、相続登記を申請した場合であっても、登記識別情報は通知されますので、ご安心ください。

※施行日について
改正法の施行の日(令和元年7月1日)前にされた特定の財産に関する遺言に係る遺言執行者によるその執行については適用しないとされている(改正法附則第8条第2項)ため、令和元年7月1日以降に作成された遺言について、適用があります。





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2025年11月12日 11:55


1.テーマ

法務局に印鑑を提出(届出)した場合、印鑑証明書の交付を受けるために必要な「印鑑カード」の交付を受けることができます。

具体的には、法務局に備え置かれている以下の書式を利用して、印鑑カードの交付を受けることになります。

印鑑を提出(届出)した方(本人)が印鑑カードの交付申請を行うことも可能ですが、登記を担当した司法書士が「代理人」として印鑑カードの交付申請をすることが多いのが実情です。

「代理人」として印鑑カードの交付を申請する以上、「委任状」が必要になりますが、法務局の備え置きの以下の書式には、委任状欄も記載されてありますので、個別に委任状をもらうことなく、この書式の委任状欄に記載してもらい、代理人司法書士が印鑑カードの交付をうけることが一般的です。

ここで、よくあるご質問として、「印鑑カード交付申請書」の委任状欄に記載すべき「住所」について、印鑑を提出した方の個人の住所を記載すべきものなのか、それとも会社の本店の住所を記載すべきなのかについてご質問を受けることがあります(主に同業者からですが)。

印鑑届出書には、個人実印を押すので、個人の住所を記載すべきというのはわかりやすいのですが、今回のテーマである印鑑カード交付申請書に押印する印鑑は個人実印ではなく、「届出印」であることから、会社の本店を記載すべきではないか考えられる方もいらっしゃいます。

そこで、本稿では、実際どちらが正しいのかについて検証していきたいと思います。


印鑑カード交付申請書

2.検討

では、印鑑カードの交付請求について定められた商業登記規則についてみていきましょう。

商業登記規則第9条の4には、以下のように定められています。

(印鑑カードの交付の請求等)
第九条の四 印鑑の提出をした者は、その印鑑を明らかにした上、被証明事項のほか、氏名、住所、年月日及び登記所の表示を記載した書面を提出して、印鑑カードの交付を請求することができる。第九条第二項の規定は、この場合に準用する。

被証明事項」(商業登記規則第9条)とは、書式の上部にある、
  • 商号・名称
  • 本店・主たる事務所
  • 資格(代表取締役など)
  • 氏名
  • 出生の年月日
  • (会社法人等番号)←商業登記規則9条4項には明記されていませんが、設立以外は一般的に記載して申請。
のことを指します(この内容は、印鑑証明書にも記載される内容になります)。

それに加えて、氏名、住所、年月日及び登記所の表示を記載した書面を提出することが求められています。

確かに、会社法の条文では、「本店」と「住所」を明確に区別していないケースもありますので、「住所」が「本店」の意味を指すのではないかというご指摘もあるかと思いますが、印鑑届について、定めた商業登記規則第9条など印鑑カードに関する規定では、「本店」と(印鑑届出者の)「住所」は明確に区別して規定されています(商業登記規則第9条第1項第4号等)。

そのため、印鑑届・印鑑カードに関して定めた商業登記規則では、「住所」は印鑑届出者の住所であり、本店を指さないと考えるのが妥当だと考えられます。

よって、印鑑カード交付申請書の委任者欄に記載すべき印鑑は、「印鑑届出者個人の住所」になると考えるべきでしょう。

なお、記載例などからうかがえるものも含めているため、具体的に明記はされていないものも含みますが、「印鑑届出者個人の住所」を記載すべきだと考える見解について以下ご紹介いたします。
  • 「司法書士入門~いまさら聞けない登記実務~ 第1回 会社設立の依頼がきた~」(登記情報 614 41頁)
  • 泉水悟『事例解説 合同会社の登記 設立、商号・目的・公告方法の変更、本店移転、業務執行社員の加入・退社、代表社員の変更、業務執行社員等の氏その他の変更、資本金の額の変更、解散・清算人・清算結了、複合事例、合同会社への種類の変更』(日本加除出版、2021年)62頁
  • 石田健悟 著『資産承継・事業承継の実務 民事信託・遺言・任意後見・種類株式の活用』(テイハン、2022年)117頁等。

【コラム】会社法では、「住所」を「本店」の意味で使われている場面がある?
会社法第4条では、「会社の住所は、その本店の所在地にあるものとする。」と規定されています。
そのため、例えば、合併契約書に記載すべき事項を定めた会社法794条1項1号では、「株式会社である吸収合併存続会社及び吸収合併により消滅する会社の商号及び『住所』」と規定しており、「本店」という意味で住所と規定しているケースも見られます。
私見にはなりますが、結局のところ、「場所」にフォーカスした場合は「住所」、支店と対比するなど、「本店」の機能という意味では「本店」と規定されているのではないかと考えています。


3.実務では

ただ、実際実務の現場では、旧の印鑑カードの交付申請書が、「本店・商号・資格・氏名」の記載を要求していた頃もある(泉水悟/著『事例解説 合同会社の登記』(日本加除出版、2021年)62頁)ようで、古くから実務をしている先生によっては、そのまま踏襲し、本店を記載して提出しているケースもあるそうです。

実際、本店の住所を記載しても、補正までは命じられているようでもなさそうですので、そこまで気にすることはないのではないか思いますが、これまでに何度か質問を受けたことがございましたので、検証がてら、本稿を執筆いたしました。




2025年08月14日 20:45


1.ケース

所有権移転の際(令和7年2月3日)に、登録免許税の減税を受けるために住宅用家屋証明書を取得しました。
所有権を取得してから約3ヶ月後に購入物件のリフォームのために住宅ローンを組み、令和7年5月3日付けで抵当権設定登記をすることになったのですが、前回所有権移転の際に取得した令和7年2月3日付住宅用家屋証明書を令和7年5月3日付けの抵当権設定登記でも使用することができますか?
それとも、新たに住宅用家屋証明書を取得する必要がありますか?


2.問題の所在

このケースでは、次の点がポイントとなります。

(1)租税特別措置法第73条の適用を受けるために所有権移転登記の申請書に添付した住宅用家屋証明書を租税特別措置法第75条の適用を受けるために抵当権設定登記の申請書に添付することは問題ないか?
(2)住宅用家屋証明書の日付が抵当権設定登記の日付より前の日付でも問題ないか?


なお、本稿では、リフォームが、租税特別措置法第75条に定める「住宅用家屋の新築等」に該当するものであることを前提としております。


3.検討

租税特別措置法第75条の適用にあたっては、次の要件があります。

【要件①】
個人が、昭和五十九年四月一日から令和九年三月三十一日までの間に住宅用家屋の新築(当該期間内に家屋につき増築をし、当該増築後の家屋が住宅用家屋に該当する場合における当該増築を含む。以下この条において同じ。)をし、又は建築後使用されたことのない住宅用家屋若しくは建築後使用されたことのある住宅用家屋のうち政令で定めるものの取得をし、当該個人の居住の用に供した場合であること

【要件②】
これらの住宅用家屋の新築又は取得(以下この条において「住宅用家屋の新築等」という。)をするための資金の貸付け(貸付けに係る債務の保証を含む。)が行われるとき、又は対価の支払が賦払の方法により行われるときは、その貸付け又はその賦払金に係る債権で次の各号に掲げるものを担保するために当該各号に定める者が受けるこれらの住宅用家屋を目的とする抵当権の設定の登記であること

【要件③】
財務省令で定めるところにより当該住宅用家屋の新築等後一年以内に登記を受けるものであること


(1)問題の所在(1)について

【要件①】
上記租税特別措置法の【要件①】については、所有権移転の際の住宅用家屋証明書で通常は足りると考えられる(松尾武「租税特別措置法第74条〔注:現行第75条〕の適用証明書の取扱いについての一考察」(登記研究459号38頁))ため、問題はないと思われます。

【要件②】
所有権移転の際の住宅用家屋証明書では、【要件②】に該当しているかがわからないため、「登記官が別途判断すべき」(前記・松尾武(登記研究38頁))とされています。
そして、その判断方法としては、「実質審査はもとより、法令上必要とされている添付書類以外の書面の提出を求める等により積極的に調査する必要はなく、登記申請書及びその添付書面上からみて第2の要件に適合する債権又はこれを担保する抵当権でないことが明らかな場合(例えば、登記原因証明情報に「土地購入資金」、「事業資金」の貸し付けと書かれている場合や根抵当権の設定などの場合)以外は、第2の要件に適合するものと判断して差し支えないとされています(前記・松尾武(登記研究39頁))。

【要件③】
登記簿の表示と申請書提出の時期により、明らかであるため、今回のケースでは、問題ありません。


(2)問題の所在(2)について

登記官の【要件②】の審査が【要件①】を証明する市町村長等の証明書とは別途行われるものであれば、証明書の発行日付が登記申請に係る抵当権設定の日付(又は被担保債権の発生の日付)より前であっても、登記官の審査に特段の影響はないと考えられます(前記・松尾武(登記研究39頁)参照)。


4.結論

租税特別措置法第75条の要件を満たしている前提であれば、上記のとおり所有権移転登記の際に使用した住宅用家屋証明を抵当権設定登記に使用することは可能と思われます。

ただ、注意しなければならないのは、租税特別措置法第75条の要件を満たしていることが前提となります。

例えば、床面積の増加を伴わないリフォーム(改築)を行った場合には、租税特別措置法第75条の要件は満たさず(民間住宅税制研究会『九次改訂 登録免許税の軽減のための住宅用家屋証明の手引き』(第一法規、2024年)99頁)、本稿の射程外になりますので、ご注意ください(登記申請は受理される可能性は十分高いもの、その後追徴されても、文句はいえません)。

なお、購入の前提として、リフォームローンがあり、購入に伴う貸し付けと実体上一体性があると考え「取得するための貸金の貸し付け」に該当するという解釈が成り立つかどうかについては、住宅ローンの借り換えの抵当権設定登記が租税特別措置法第75条の適用が否定されている点との整合性をつける必要があるなど、さらなる検討が必要になるかと思います(現時点で、考えを持ち合わせているわけではありませんが、無難にいくなら消極と解釈することになるかと思います。)。


(参考文献)





2025年08月10日 19:24


1.ケース 

外国人(アメリカ人)が平成30年に日本で不動産を購入し、登記簿には外国(アメリカ)の住所が記載されています。
その後、令和3年に日本(神戸市)で移住し、住民登録を行っているため、現在住民票や印鑑証明書の交付を受けることができる状態です。
この度(令和7年)、令和3年住所移転を登記原因とする住所変更登記を申請するところ、(外国人)住民票には、前住所が記載されていません(アメリカの住所はもちろん、前住所は「アメリカ国」といった記載もありません)。
この場合、住所を証する書面には、何を添付すべきでしょうか?
いわゆる宣誓供述書を添付する必要がありますか?


2.前提知識

権利に関する登記を申請する場合には、申請人は、法令に別段の定めがある場合を除き、その申請情報と併せて登記原因を証する情報を提供しなければならない(不動産登記法第61条)とされています。

そして、登記名義人の氏名若しくは名称又は住所についての変更の登記又は更正の登記を申請する場合には、変更又は更正を証する情報(登記原因証明情報)として、登記名義人の氏名若しくは名称又は住所についての変更又は住所について変更又は錯誤若しくは遺漏があったことを証する市区町村長、登記官その他の公務員が職務上作成した情報(公務員が職務上作成した情報がない場合にあっては、これに代わる情報)を提供しなければならない(不動産登記令、別表23の項添付情報欄)とされています。

具体的に、登記名義人が自然人である場合の住所変更(更正)の登記を申請をする場合には、変更を証する書面として、住民票の謄抄本等を添付することになります(質疑応答1640)。


3.今回のケース

外国人でも、中長期在留者及び特別永住者を含む一定の在留資格を有する場合は、日本国民と同様に住民票が作成され、その写し(証明書)の交付を受けることができますので、これらに該当する外国人であれば、日本人と同様に取り扱うことができます。

しかしながら、今回は、外国人住民票では住所の沿革(つながり)を立証することができないケースです。

そのため、今回のケースでは、申請人が「外国人」であるから、所有権を取得する際に添付する住所証明書に準じて、登記名義人となる者の本国若しくは居住国の政府の作成に係る住所を証明する書面又はこれと同視する書面など(いわゆる宣誓供述書)の添付すべきと考える方もいらっしゃるようです。

ただ、宣誓供述書は、原則として外国人の本国の大使館や領事館などで作成してもらう必要があり、特に地方に住んでいるような場合、依頼者にとっては負担が大きくなります。

そこで、日本人の場合で、住民票で沿革がつかない場合はどのように対応するかを考えてみます。

実際、令和元年6月20日住民基本台帳法改正前は、保存期間が5年であったため(現在は150年)、日本人であっても、住所の沿革がつかないケースは散見されます。

そういった場合は、沿革はついてないものの、住民票を添付し、さらに上申書(印鑑証明書付)、登記済証(登記識別情報通知)などを添付して、登記申請を行っています(法務局によって取り扱いが異なっています)。

沿革はついていないものの、住民票を添付したうえで、上申書(印鑑証明書付)、登記済証(登記識別情報)も添付しているにもかかわらず、外国人と日本人を区別する理由は特にありません。

したがって、今回のケースは、宣誓供述書を添付することなく、外国人住民票、上申書(印鑑証明書)、登記識別情報を添付して登記申請をすればよいということになります(実際に法務局に受理されています)。

なお、平成24年7月9日外国人登録法廃止前に、日本に住所があるようなケースでは、外国人登録原票等が転居の履歴を証する書面に該当することから、これらの調査をせずに、当該外国人が保有する登記済証又は登記識別情報通知をもって転居の履歴を証する情報として取り扱うのは相当ではないかと思われます(登記研究858-75参照。)。




2025年07月11日 22:53


1.相談事例

Aは平成27年に遺言書を作成し、令和7年に亡くなりました。
この遺言書には、Aの相続人ではないBに対して「遺贈」する旨の記載があり、遺言執行者として受遺者Bが指定されています。
仮に遺言書が作成されたのが令和元年7月1日以降であれば、改正後の民法の規定が適用されるので、遺言執行者に復任権が認められ、登記義務者亡A遺言執行者Bとして司法書士に登記を依頼することはできるのは理解できます。
ただ、改正前民法は「やむを得ない」事由がなければ復任権がないので、令和元年6月30日以前に遺言書が作成されている今回のケースは、登記義務者亡A遺言執行者Bとして司法書士に登記を依頼することができるか疑問なのですが、どのように理解したらよいでしょうか?


2.現行民法と改正前民法の比較

では、まず現行の民法と令和元改正前民法の条文をみてみましょう。 

【現行(改正後)】民法1016条(遺言執行者の復任権)
①遺言執行者は、自己の責任で第三者にその任務を行わせることができる。ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは,その意思に従う。
②前項本文の場合において、第三者に任務を行わせることについてやむを得ない事由があるときは、遺言執行者は、相続人に対してその選任及び監督についての責任のみを負う。


【改正前】民法1016条(遺言執行者の復任権)
①遺言執行者は、やむを得ない事由がなければ、第三者にその任務を行わせることができない。ただし、遺言者がその遺言に反対の意思を表示したときは,この限りでない。
②遺言執行者が前項ただし書の規定により第三者にその任務を行わせる場合には,相続人に対して、第105条に規定する責任〔=選任・監督について責任〕を負う。

条文を比較するとわかるとおり、現行民法と改正前民法の大きな違いは、現行民法は、「自己の責任で第三者にその任務を行わせることができる」と規定されているのに対し、改正前民法は、「『やむを得ない事由』がなければ、第三者にその任務を行わせることができない」と規定されていたことでした。

ここでいう「やむを得ない事由」とは、「病気や海外出張のため、長期間にわたってその任務を行うことができない場合等」(幸良秋夫/著『新訂 設問解説 相続法と登記』(日本加除出版、2018年)376頁)に該当すると考えられているため、仮にこれらの事由がない場合には、復任権が認められないということになります。

改正前民法は、「遺言執行者を任意代理人に近いものと位置付けていた(民104条、改正前民1016条1項)」(窪田充見『家族法 民法を学ぶ 第4版』(有斐閣、2019年)477頁)ものの、以下の問題点が指摘され、現行民法は、遺言者が遺言で別段の意思表示をしない限り、自己の責任で第三者にその任務を行わせることができるものとされています。

  • 遺言において遺言執行者の指定がされる場合には、相続人など必ずしも十分な法律知識を有していない者が指定される場合も多く、遺言執行者の職務が広範に及ぶ場合や、難しい法律問題を含むような場合には、その遺言執行者において適切に遺言を執行することが困難な場合もあり得る。
  • 実務においては、相続人が遺言執行者に選任されることも多いことから、遺言の内容によっては、遺言執行者の職務とされた行為のうち、その一部については利益相反の関係に立つため、その相続人に遺言執行者の職務を行わせるのが相当でない場合や、遺言執行者が一部の相続人と対立関係にあるために、その相続人の利益となる行為を適切に行うことを期待することができない場合がある。

3.現行民法の適用時期

新法施行日前にされた遺言に係る遺言執行者の復任権については、新法第1016条の規定にかかわらず、なお従前の例による(改正法附則第8条第3項)とされています。

つまり、遺言者が亡くなったときではなく、遺言書作成日が、令和元年7月1日以降かどうかで、現行法が適用されるかが決まります。


4.今回の事例の検討

今回の事例は、令和元年7月1日より前に作成された遺言であるため、改正前民法の適用があります(改正法附則第8条第3項)。

そのため、やむを得ない事由がなければ、第三者にその任務を行わせることはできません。

ただし、ここで注意しなければならないのは、「第三者にその任務を行わせる」とは、遺言執行者の任務の全部、すなわち遺言執行者の権利・義務を包括的に第三者に行わせることをいい、特定の行為又は特定の範囲の行為について、第三者に代理権を与えて行わせること、あるいは履行補助者を使用することは許される(大決昭2.9.17民集6巻501頁)と考えられている点です(幸良秋夫/著『新訂 設問解説 相続法と登記』(日本加除出版、2018年)376頁)。

つまり、「改正前民法の下においても、相続財産に関する訴訟を弁護士に委任したり、登記申請を司法書士に委任するなどを含め特定の行為又は特定の範囲の行為について第三者に委任することは妨げられないとするのが判例(大決昭2・9・17民集6・501)」(中根秀樹『遺言執行実務マニュアル』(新日本法規出版、2020年)14頁)の立場です。

よって、本事例の場合は、登記義務者亡A遺言執行者Bとしてやむを得ない事由がなくても、司法書士に登記を依頼することができます
当然「やむを得ない事由」を証する書面の提出を法務局に求められたりすることはありません。


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