2023年02月07日 14:32
[実務メモ(商業登記)]会社の代表者の氏名・住所が変わってたら?
1.会社の代表者の住所が変わっていた場合
株式会社の場合は代表取締役、有限会社の場合は取締役の住所が会社の登記簿に記載されます(タイトルは、「会社の代表者」とは言っていますが、有限会社の場合は「取締役」に置き換えてください)。
住民票を移したけれど、会社の登記簿を変えるのを忘れているケースは、実務上多くみられます。
では、例えば役員の重任登記(役員を再任した登記のことです)を入れる前に、登記されている住所に変更があった場合、住所変更登記は必要になるのでしょうか?
次の問題で考えてみましょう。
【問題】
(登記簿の抜粋)
令和元年6月1日 神戸市***** 代表取締役A就任
令和2年8月1日にAは住所を大阪市に移転
令和3年6月1日付けで重任登記を入れたい。
→なすべき登記は?
(つまり、時系列どおり、令和2年8月1日代表取締役Aの住所移転+令和3年6月1日代表取締役Aの重任をしなければならないか?)
(登記簿の抜粋)
令和元年6月1日 神戸市***** 代表取締役A就任
令和2年8月1日にAは住所を大阪市に移転
令和3年6月1日付けで重任登記を入れたい。
→なすべき登記は?
(つまり、時系列どおり、令和2年8月1日代表取締役Aの住所移転+令和3年6月1日代表取締役Aの重任をしなければならないか?)
(解答)
令和3年6月1日代表取締役Aの重任登記のみで可能(登記研究78-46)
では、該当する質疑応答をみてみましょう。
【質疑応答1485】重任登記と住所変更について
(問)
株式会社取締役の重任による変更登記の申請があった場合、住所が前に登記してある住所と相違している時は、住所変更のあった事が推定されるから、重任登記より先に住所変更登記を申請させるべきでしょうか。
(答)
住所変更の登記は必要ないと解します。
(問)
株式会社取締役の重任による変更登記の申請があった場合、住所が前に登記してある住所と相違している時は、住所変更のあった事が推定されるから、重任登記より先に住所変更登記を申請させるべきでしょうか。
(答)
住所変更の登記は必要ないと解します。
また、住所が変わったという住所変更のみならず、住所がそもそも間違っていたという住所更正の場合も、住所変更の場合と同様に、住所更正の登記を申請することなく、重任登記を入れることができるとされています(登記研究375-82)。
【質疑応答5627】代表取締役の重任登記と住所更正の登記の要否
(問)
株式会社の代表取締役の重任による変更登記の申請に際し、当該代表取締役の登記してある住所が錯誤・遺漏により新たに登記すべき住所と相違していても、住所の更正登記をする必要はないと解して差し支えないでしょうか。
(答)
差し支えないと考えます。
(問)
株式会社の代表取締役の重任による変更登記の申請に際し、当該代表取締役の登記してある住所が錯誤・遺漏により新たに登記すべき住所と相違していても、住所の更正登記をする必要はないと解して差し支えないでしょうか。
(答)
差し支えないと考えます。
なお、氏名や住所の変更登記をせずに重任登記をすることができるとしても、戸籍謄抄本又は住民票の添付は必要との見解もありますので、ご注意ください(商業登記法ハンドブック430頁参照。)。
※添付しなくても、審査が通っているケースも経験していますが。。。
2.役員の死亡の登記際に、住所や氏名が異なっていることが判明したとき
次に、比較しておきたいのが、役員の死亡の登記をとの関連です。
役員が死亡したことにより、役員の死亡による退任登記を申請しようとしたところ、
①登記簿上の住所と亡くなったときの住所が異なっていたとき
(住所変更の登記は必要か?)
②氏名が異なっていたとき
(氏名変更の登記は必要か?)
は、住所変更や氏名変更の登記をせずに死亡による退任登記だけで良いのでしょうか?
この点、前述の重任登記の場合と違い、変更、更正登記をしない限り、当該申請は受理されないと考えられます(登記研究412-167)。
では、質疑応答をみてみましょう。
【質疑応答6060】役員の死亡による変更登記について(登記研究412-167)
(問)
登記簿に住所の登記のある役員の死亡の登記申請に当たり、死亡を証する書面の住所と登記上の住所が異なっていても、氏名が一致していれば、住所変更又は更正登記を経ないままでも、当該登記申請は受理されると解してよろしいでしょうか。
また、氏名が異る〔原文ママ〕場合は、氏名が異る〔原文ママ〕も同一人に相違ない旨の代表者の上申書を添付すれば、氏名の変更又は更正登記を経ないままでも、当該登記申請は受理されると解してよいでしょうか。
(答)
前段、後段ともに消極に解します。
(問)
登記簿に住所の登記のある役員の死亡の登記申請に当たり、死亡を証する書面の住所と登記上の住所が異なっていても、氏名が一致していれば、住所変更又は更正登記を経ないままでも、当該登記申請は受理されると解してよろしいでしょうか。
また、氏名が異る〔原文ママ〕場合は、氏名が異る〔原文ママ〕も同一人に相違ない旨の代表者の上申書を添付すれば、氏名の変更又は更正登記を経ないままでも、当該登記申請は受理されると解してよいでしょうか。
(答)
前段、後段ともに消極に解します。
したい登記が重任登記の場合と死亡による登記の場合で、結論が異なる取扱いがされているようですので、十分注意しましょう。
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